吸着等温線(ラングミュア・フロイントリッヒ)の違いと活性炭の量・破過時間の計算

化学工学/吸着・イオン交換吸着・イオン交換の1本目(全1本)公開

吸着装置の大きさと交換の時期は、主に吸着等温線・物質収支・破過曲線の3つから決めます。等温線で活性炭1 kgが持てる量を読み、収支で量を出し、破過曲線で交換の時期を見積もります。2つの等温式の違い、計算の例、湿気や吸着熱のつまずきをまとめました。

活性炭の量と交換の時期を見積もる手順

  1. 処理する液やガスの量と、入口・出口の濃度を決める
  2. 使う活性炭で、運転と同じ温度の吸着等温線を測る
  3. ラングミュア式かフロイントリッヒ式に当てはめ、平衡吸着量 q を読む。撹拌槽なら処理後の濃度で、固定層なら入口の濃度で読む
  4. 除く量を q で割り、活性炭の量を出す
  5. 固定層は破過時間の式で交換か再生の時期を出す。繰り返し使う分の性能低下を見込み、吸着量は新品の1/2〜2/3で置く
  6. 小さな試験塔で破過曲線を測り、吸着帯の長さを確かめる
この記事の内容
  1. ラングミュア式とフロイントリッヒ式の違い
  2. 吸着剤の種類と使い分け
  3. 物理吸着と化学吸着
  4. 例題:撹拌槽と固定層で活性炭の量を比べる
  5. 例題:固定層の破過時間から交換の時期を決める
  6. PSAとTSAの違い(再生のしかた)
  7. つまずきやすい点
  8. 参考資料

ラングミュア式とフロイントリッヒ式の違い

比べる点 ラングミュア式 フロイントリッヒ式
もとの考え方 平らで一様な表面に1層だけ吸着するモデル 不均一な表面での吸着を表す実験式
濃度が低いとき 濃度に比例する(直線) 比例しない
濃度が高いとき 飽和吸着量 qs で頭打ちになる 頭打ちが無く増え続ける
よく使う場面 気相の吸着平衡の整理。液相にも使う 液相の吸着で最も一般的。気相でも測った範囲の近似に使う
直線にするプロット 縦軸 C/q・横軸 C(ラングミュアプロット) 縦軸 log q・横軸 log C(両対数)
定数の単位(q[kg/kg]・C[kg/m³]のとき) qs は[kg/kg]、K は[m³/kg] k は[(kg/kg)/(kg/m³)1/n]、1/n は[-]

表は化学工学便覧13·3、『化学工学 解説と演習』6.2、EPAの資料によります。

ラングミュア式

$$q = \frac{q_{s} K C}{1 + K C}$$

式は横にスクロールできます

q:平衡吸着量(吸着剤1 kgあたり)[kg/kg]、C:平衡濃度[kg/m³]、K:吸着平衡定数[m³/kg]、qs:飽和吸着量[kg/kg]

ラングミュアプロット

$$\frac{C}{q} = \frac{1}{q_{s} K} + \frac{C}{q_{s}}$$

式は横にスクロールできます

縦軸にC/q、横軸にCをとると、傾き1/qs・切片1/(qsK)の直線になります。

フロイントリッヒ式

$$q = k\,C^{1/n}$$

式は横にスクロールできます

1/n:定数[-]、k:定数[(kg/kg)/(kg/m³)1/n]

フロイントリッヒ式の両対数プロット

$$\log q = \log k + \frac{1}{n}\log C$$

式は横にスクロールできます

両対数の方眼で直線になり、傾きが1/n、C=1 kg/m³のときのqがkです。

どちらの式を使うかは、測ったデータを2つのプロットに描いて決めます。C/q対Cが直線に乗ればラングミュア式、両対数で直線に乗ればフロイントリッヒ式です。吸着等温線フィット(別サイト)のツールでも、2つの式の当てはまりを比べられます。どちらの式も、測った濃度の範囲の外へ延ばして使いません。

一般に、吸着操作に使う系ではフロイントリッヒ式の1/nが1より小さくなります(n>1)。この形を「好ましい形」の等温線と呼びます。低い濃度でもよく吸着し、固定層の吸着帯が一定の長さを保って進むのが特長です。有機物の水溶液と活性炭の例では、1/nが0.33〜0.75の範囲に入ります(化学工学便覧 表13·8)。

定数の値は単位で変わります。便覧の表13·8は、qをg/kg、Cをg/m³で表した値です。たとえばブタノールのk=3.20(1/n=0.509)は、kg単位に直すと0.108です。分圧p[Pa]で書くラングミュア式なら、Kの単位は[1/Pa]になります。

吸着剤の種類と使い分け

吸着剤は、除きたい成分と水分の関係で選びます。湿った空気や水から有機物を除くなら、表面が疎水性の活性炭です。ガスや液から水分を除くなら、親水性のシリカゲル・活性アルミナ・ゼオライトを使います。分子の大きさで分けたいときは、細孔の径がそろったゼオライトや分子ふるい炭が候補です。

吸着剤 表面の性質 比表面積[m²/g] 細孔の大きさ 充填密度[kg/m³] 再生のしかた 主な用途
活性炭 疎水性 700〜1,500(繊維状は500〜2,500) 平均1〜5 nm 350〜620(粒状) 水蒸気や熱いガスで加熱。水処理の炭は炉で焼いて再生 溶剤の回収、排気の脱臭、水処理、液の脱色・精製
合成ゼオライト 親水性。細孔の径がそろう ― 0.3〜1 nm(A形・X形) 570〜750 熱風・減圧 脱湿、酸素や窒素の濃縮、分子の大きさでの分離
シリカゲル 親水性 550〜700 2〜3 nm 700〜820 加熱(150〜175℃) 脱湿
活性アルミナ 親水性 150〜330 4〜12 nm 490〜920 加熱(175〜320℃) 脱水・脱湿
分子ふるい炭 細孔の径がそろう ― 0.3〜0.5 nm 500〜640 減圧(PSA) 空気からの窒素の分離

出典:化学工学便覧 表13·1〜13·4・13·28、『化学工学 解説と演習』表6·2、『解説 化学工学』表5·12。値は3冊の幅で、再生温度はKを℃に直した値

物理吸着と化学吸着

比べる点 物理吸着 化学吸着
働く力 ファンデルワールス力など 表面との化学結合(表面に新しい化学種ができる)
結合の強さ 化学結合より弱く、蒸発潜熱と同じ程度 強い
吸着する層 多分子層にもなる 活性点に1分子ずつの単分子層
脱着 可逆で、加熱や減圧で脱着できる 不可逆なことが多い
主な場面 溶剤の回収・脱臭・脱湿・PSAなど、工業の吸着分離の大部分 触媒反応。繰り返し使う吸着分離では避けたい

出典:『解説 化学工学』5·6·1、『反応工学 改訂増補版』2·4

新しい活性炭に吸着した有機物の約3〜5%は、化学吸着や強い物理吸着のため再生で取りにくい分です(EPA)。

例題:撹拌槽と固定層で活性炭の量を比べる

次の排水を、撹拌槽か固定層で処理する場合を比べます(値はどれも例として置いたもの)。

  • 排水:10 m³。有機物0.20 kg/m³(200 mg/L)を0.02 kg/m³まで下げる
  • 活性炭:撹拌槽では粉末(混ぜた後にろ過で分ける)、固定層では粒状を使う。比べやすいよう、等温線は同じとみなす
  • 等温線:同じ温度の試験でフロイントリッヒ式 q=0.20√C に合った(qはkg/kg、Cはkg/m³)
  • 除く量:10×(0.20−0.02)=1.8 kg

収支の立て方は物質収支とエネルギー収支と同じです。

回分(撹拌槽)の物質収支

$$m\,q = V\,(C_{0} - C)$$

式は横にスクロールできます

q:処理後の濃度 C に平衡な吸着量[kg/kg]、V:液の量[m³]、C0・C:処理前・処理後の濃度[kg/m³]、m:活性炭の量[kg]

接触のさせ方 活性炭が平衡になる濃度 吸着量 q 要る活性炭
撹拌槽に1回で入れる 処理後の 0.02 kg/m³ 0.028 kg/kg 64 kg
撹拌槽2段の向流(新しい炭は後段に入れて前段へ送る) 前段の出口の 0.10 kg/m³ 0.063 kg/kg 28 kg
固定層に流す(層全体が飽和したときの上限) 入口の 0.20 kg/m³ 0.089 kg/kg 20 kg

撹拌槽に1回で入れると、活性炭は処理後の薄い液と平衡になります。吸着量が小さく、固定層の約3倍の64 kgが要る計算です。2段の向流なら、前段の炭が濃い液と平衡になり28 kgで済みます。固定層の20 kgは、層全体が飽和した場合の値です。実際は吸着帯の分だけ多く要ります。

固定層にするかは、吸着係数β=q0/C0に充填密度γを掛けたβγで目安を付けます。βγは、層の体積の何倍の液を処理できるかを表す数です。『解説 化学工学』は、数百以上を経済的な条件としています。この例ではβ=0.45 m³/kgで、γを450 kg/m³とするとβγは約200です。目安の下限に近い値になります。

例題:固定層の破過時間から交換の時期を決める

固定層では入口側から活性炭が飽和し、吸着が進む狭い範囲(吸着帯)が出口へ動きます。出口の濃度の時間変化が破過曲線で、許される値(破過濃度)に達した時点が破過時間です。ここで流れを次の塔へ切り替えます。

吸着帯の長さを0とした吸着終了時間

$$\theta_{0} = \frac{\gamma Z q_{0}}{u\,C_{0}}$$

式は横にスクロールできます

θ0:吸着終了時間[s]、γ:充填密度[kg/m³]、Z:層の高さ[m]C0:入口濃度[kg/m³]、q0:C0 に平衡な吸着量[kg/kg]、u:空塔速度[m/s]

破過時間(吸着帯の半分が使われずに残るとした近似)

$$\theta_{B} = \theta_{0}\left(1 - \frac{Z_{a}}{2Z}\right)$$

式は横にスクロールできます

θB:破過時間[s]、Za:吸着帯の長さ[m]

次の条件で計算します(値はどれも例として置いたもの)。

  • 排気:1,800 m³/h、溶剤の蒸気1.0 g/m³、25℃
  • 活性炭層:断面積2.0 m²、層高0.6 m、充填密度450 kg/m³(活性炭540 kg)
  • 等温線:ラングミュア式で qs=0.40 kg/kg、K=2,000 m³/kg
  • 吸着帯の長さ:小さな試験塔の破過曲線から0.15 m
  1. 空塔速度:u=1,800÷3,600÷2.0=0.25 m/s
  2. 入口濃度に平衡な吸着量:K·C0=2,000×0.0010=2 なので、q0=0.40×2÷(1+2)=0.267 kg/kg
  3. 吸着終了時間:θ0=450×0.6×0.267÷(0.25×0.0010)=288,000 s=80 h
  4. 破過時間:θB=80×(1−0.15÷1.2)=70 h
  5. 性能の低下を見込む:q0を新品の1/2〜2/3に置くと(『解説 化学工学』の設計の目安)、θBは35〜47 h

1日16時間の運転なら、新品で4日あまり、低下を見込むと2〜3日ごとに再生か交換が要ります。EPAの資料は、吸着帯の分や再生後に残る分も含めて、使える量を入口の平衡吸着量の50%と見積もります。この例に当てはめると、θ0の半分の40 hです。

変えた条件 q0 θ0 θB
基準(1.0 g/m³・0.25 m/s・層高0.6 m) 0.267 kg/kg 80 h 70 h
入口濃度を2倍(2.0 g/m³) 0.320 kg/kg 48 h 42 h(吸着帯が同じ長さなら)
流量を2倍(0.50 m/s) 0.267 kg/kg 40 h 30〜33 h(吸着帯が1.4〜2倍に伸びるとして。試験塔で確かめる)
層を半分の0.3 mに 0.267 kg/kg 40 h 30 h(使える活性炭は75%)

吸着帯の長さ

$$Z_{a} = \frac{u}{K_{F} a_{v}} N_{OF}$$

式は横にスクロールできます

NOF:移動単位数(破過の始まりと終わりの濃度と等温線で決まる値)[-]、KFav:総括物質移動容量係数[1/s]

濃度が2倍でも吸着量は1.2倍にしか増えないので、θ0は6割に縮みます。流量を2倍にするとθ0は半分で、吸着帯も伸びるので破過時間は半分を割ります。粒内の拡散が律速なら総括物質移動容量係数は流速でほとんど変わらず、吸着帯は2倍の長さです。境膜の拡散が律速なら係数は流速の0.5乗で増え、伸びは約1.4倍です(化学工学便覧 表13·20のCarberryの式)。

計算では、出口の濃度が入口の5〜10%に達した点を破過と置きます(『解説 化学工学』)。運転では排出の管理値が破過濃度です。交換式の容器を2つ直列にし、飽和した前の容器を外して後ろに新しい容器を足す方法もあります。

PSAとTSAの違い(再生のしかた)

吸着剤をくり返し使うには、圧力を下げるか温度を上げて、吸着したものを追い出します。

方式 吸着と脱着のさせ方 1サイクルの長さ 主な使い道
PSA(圧力スイング吸着) 高い圧力で吸着し、常圧か真空に下げて脱着する。製品ガスの一部を流して洗い出す 数分〜数十分(半サイクルで1〜30分) 空気からの窒素(分子ふるい炭)や酸素(ゼオライト)の濃縮、水素の精製、圧縮空気の除湿
TSA(温度スイング吸着) 常温に近い温度で吸着し、水蒸気や熱いガスで温めて脱着する。乾かして冷やしてから戻す 時間の単位(脱着の工程は1〜1.5時間) 溶剤の回収、ガスの乾燥
交換(その場で再生しない) 飽和した活性炭を容器ごと替え、再生は外部の施設で行う 破過までの時間で決まる 風量の少ない排気や断続的な排気(貯槽のベントなど)

出典:化学工学便覧13·5·5・13·5·7・13·6·1・表13·28、EPAの資料

計装用の乾燥空気をつくるヒートレスドライヤーも、除湿のPSAです(計装用空気の特徴)。溶剤の回収では水蒸気で溶剤を追い出し、凝縮させて水と分けてから再利用します。水蒸気は、吸着した溶剤1 kgあたり3〜4 kgが目安です(EPA)。塩素系の溶剤は分解するおそれがあり、分解物の腐食に注意が要ります。熱で溶剤が変質するなら、減圧で脱着する方法もあります。

つまずきやすい点

等温線は温度と活性炭の状態で変わる

吸着は発熱を伴うので、温度が上がると平衡吸着量は下がります。等温線は運転の温度で測り、別の温度へは吸着熱を使って換算します。文献の値は、新品を理想の条件で測った値です。同じ銘柄でも、製造ロットや使用回数で値は変わります。可塑剤や高級脂肪酸を含む排気では、劣化も早まります。

湿気で溶剤の吸着量が落ちる

活性炭は疎水性ですが、相対湿度が高いと細孔に水を吸うのが弱点です。便覧の活性炭素繊維の例では、相対湿度40%あたりから水の吸着が増え、溶剤の吸着量が下がり始めます。入る空気を少し温めて相対湿度を30%以下にすると、水の吸着は大きく減ります(化学工学便覧)。

吸着熱で層が熱くなる(特にケトン類は発火に注意)

物理吸着でも吸着熱は凝縮熱と同じかそれ以上あり(EPA)、ガスの吸着では層が断熱に近くなりがちです。活性炭はもともと燃える物質で、ある種の物質を吸着すると発火点が下がります。環境省の資料は、MEKなどのケトン系溶剤を処理するときは発火防止などの十分な安全対策が要るとしています。層に高温の部分をつくりやすいとして米国EPAの警告が挙げるのは、ケトン類のほかアルデヒド類・一部の有機酸・有機硫黄化合物と、高い濃度の有機物です。愛知県の資料によると、MEKやMIBKなどのケトン類では止めた夜間に熱がたまり、特に粒状活性炭で発火するおそれがあります。同じ資料が挙げる対策は、次の4つです。

  • 止める前に必ず脱着しておく
  • 止めた後は、窒素か水で封じる
  • 活性炭を定期的に取り替える
  • ケトン類を減らす前処理、温度センサー、非常用の消火設備を設ける

便覧が挙げるのも、溶剤を吸着した活性炭が残った酸素との反応で過熱し、爆発に至る危険です。設備の安全対策や法令の要求は、所轄の行政機関と最新の条文で確かめる必要があります。

混ざった成分は置き換わる

成分が2つ以上あると、強く吸着する成分が弱い成分を追い出します。EPAの資料では、蒸気圧の低いVOCが高いVOCを置き換えるのが普通です。追い出された成分は、出口で入口より濃くなることもあります。吸着の時間は、安全側に最も吸着しにくい成分で決めます。

参考資料

  1. 化学工学会編『改訂六版 化学工学便覧』丸善、1999年(13章 吸着・イオン交換 p.692〜730)
  2. 化学工学会監修、多田豊編『化学工学 ―解説と演習― 改訂第3版』朝倉書店、2008年(6.2 吸着 p.180〜188)
  3. 竹内雍・松岡正邦・越智健二・茅原一之『解説 化学工学 改訂版』培風館、2001年(5·6 吸着・イオン交換と固液抽出 p.177〜187)
  4. 橋本健治『反応工学 改訂増補版』培風館、2019年(2·4 律速段階近似法による反応速度式の導出 p.27)
  5. W. M. Vatavuk, W. L. Klotz, R. L. Stallings, Chapter 1 Carbon Adsorbers(別サイト), EPA Air Pollution Control Cost Manual (EPA/452/B-02-001), U.S. Environmental Protection Agency, 1999
  6. U.S. Environmental Protection Agency, Fire Hazard from Carbon Adsorption Deodorizing Systems(別サイト), Chemical Safety Alert (EPA 550-F-97-002e), 1997
  7. 環境省「排出抑制技術の概要(別サイト)」(表9 活性炭を使用した吸着装置の種類及び特徴)
  8. 愛知県「参考資料(VOC対策技術)(別サイト)」1-1 活性炭吸着装置(固定床タイプ)(「揮発性有機化合物(VOC)の排出抑制対策に関する調査 調査報告書」2007年3月の引用)
  9. 板垣晴彦・松田東栄「除害処理に使用した活性炭の熱的反応性(別サイト)」産業安全研究所研究報告 NIIS-RR-94、1995年

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