我が国では、水素の輸送方法の1つである有機ハイドライド輸送の実証実験が進められている。有機ハイドライド輸送に関する次の記述の、【 】に入る語句の組合せとして、最も適切なものはどれか。
有機ハイドライド輸送は、芳香族系有機化合物を水素キャリアとして用いているものである。液体状態に比べて体積は【 A 】程度となり、また液体化するためケミカルタンカーやケミカルローリーを用いることができる。
水素付加(水素化)は【 B 】反応であり、水素脱離(脱水素化)は【 C 】反応である。いくつかの系のうち、我が国では安全性や利便性などの点から【 D 】-【 E 】系の実用化が進められている。ともに汎用化学品であり、既存の社会インフラが利用可能であるためである。
水素製造地において、 【 E 】を水素化して【 D 】とし輸送する。需要地で【 D 】を脱水素化し、【 E 】は水素製造地に戻される。
選択肢 | A | B | C | D | E |
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1 | 5分の1 | 発熱 | 吸熱 | メチルシクロヘキサン | トルエン |
2 | 5分の1 | 吸熱 | 発熱 | シクロヘキサン | ベンゼン |
3 | 500分の1 | 発熱 | 吸熱 | シクロヘキサン | ベンゼン |
4 | 500分の1 | 吸熱 | 発熱 | メチルシクロヘキサン | トルエン |
5 | 500分の1 | 発熱 | 吸熱 | メチルシクロヘキサン | トルエン |
解答解説
正答は5番です。
有機ハイドライド輸送は、水素を効率的に貯蔵・輸送する方法として注目されています。この方法では、トルエンなどの芳香族化合物を水素化してメチルシクロヘキサン(MCH)などの飽和環状化合物に変換し、常温・常圧の液体状態で貯蔵・輸送します。
MCHは気体の水素と比べて体積が約1/500になるため、効率的な輸送が可能です。また、常温・常圧で液体であるため、既存の石油インフラ(タンク、輸送船等)を活用できる利点があります。
水素化反応は発熱反応であり、脱水素反応は吸熱反応です。日本では、トルエン-MCH系の実用化が進められています。これらは汎用化学品であり、既存の社会インフラを利用できるため、安全性や利便性の点で優れています。このシステムでは、水素製造地でトルエンを水素化してMCHとし輸送します。需要地でMCHを脱水素化して水素を取り出し、トルエンは水素製造地に戻されて再利用されます。
参考資料
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SPERA水素システムについて
www.chiyodacorp.com