令和4年度 問1

有機化合物に対する還元反応についての次の記述のうち、適切なものはどれか。

  1. 水素化ホウ素ナトリウムNaBH4を用いて水あるいはアルコール溶液中でカルボン酸を第一級アルコールに還元することができる。
  2. 水素化リチウムアルミニウムLiAlH4は強力な還元剤であり、エステルは第一級アルコールまで還元される。これに対して水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAH)を用いるとエステル基は部分的に還元されてアルデヒドで反応が止まり、実験室規模でアルデヒドを合成する重要な反応となっている。
  3. アルキンは金属触媒上でH2を付加させることによりアルカンに還元されるが、触媒として活性が弱いLindlar触媒を用いると水素化をアルケンの段階で止めることができる。水素化はシン立体化学で起こりtrans-アルケンを与える。
  4. LiAlH4のような金属水素化物によるカルボニル基の還元反応機構は、カルボニル基の正に分極した求電子的な炭素原子に求核的なプロトンH+が付加することによって起こる。
  5. アルデヒド又はケトンをKOHの存在下にヒドラジンH2NNH2で処理すると、アルカンに変換することができる。この反応はClemmensen還元と呼ばれる。

解答解説

正答は2番です。

1番の水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)は通常、カルボン酸を第一級アルコールに還元することはできません。NaBH4はアルデヒドやケトンを選択的に還元する試薬として利用されます

3番のLindlar触媒は水素化触媒で、アルケンの段階で反応が止められる特徴があります。通常、Pd/Cなどの触媒を使うと反応が激しく進行するためアルカンが得られます。触媒表面にアルキンや水素が結合して反応が起こるため、cis体のアルケンが得られます。

4番の金属水素化物はプロトンH+ではなくヒドリドH-を用いた求電子反応が進行します。

5番の反応はWolff-Kishner還元と呼ばれます。Clemmensen還元は別の反応で、亜鉛アマルガムと塩酸を用いてカルボニル基をメチレンに還元する反応です。Wolff-Kishner還元は塩基性条件下で、Clemmensen還元は酸性条件下で使用できることから条件に応じて使い分けます。

参考資料

水素化ホウ素ナトリウムは還元剤のきほんの「き」 - とらおの有機化学
水素化ホウ素ナトリウムは還元剤のきほんの「き」

www.tora-organic.com

水素化ジイソブチルアルミニウムは部分還元を可能にする汎用還元試薬 - とらおの有機化学
水素化ジイソブチルアルミニウムは部分還元を可能にする汎用還元試薬

www.tora-organic.com

https://www1.meijo-u.ac.jp/~tnagata/education/ochem1/2021/ochem1_02.pdf
アルケン・アルキンのその他の反応・多段階合成

www1.meijo-u.ac.jp

水素化リチウムアルミニウム Lithium Alminum Hydride (LAH) | Chem-Station (ケムステ)
水素化リチウムアルミニウム Lithium Alminum Hydride (LAH)

www.chem-station.com

アルデヒドとケトンの反応⑥ | 猫でもわかる有機化学
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2024年3月11日 広告

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