蛍石型構造とその関連物質に関する次のA~Eの記述のうち、不適切なものの組合せはどれか。
- 蛍石(フッ化カルシウム:CaF2)は、天然には産出しない。
- 蛍石の結晶構造では、面心立方ブラベ格子の各格子点に3個のイオン(1個のCa2+と2個のF-)が配置されており、単位格子当たり9個のイオンがある。
- 蛍石型(MX2型)構造は、CsCl型(MX型)構造のMが一個おきに抜けた派生構造と考えることもできる。
- 純粋なZrO2は室温で単斜晶系の歪んだ蛍石型構造であるが、CaOなどを固溶させることで立方晶系の安定化ジルコニアが得られる。
- ZrO2にCaOやY2O3を固溶させると、酸素位置に空孔が生成し、高湿ではイオン半径が大きな○2-が拡散でき、この現象を利用した燃料電池が開発されている。
選択肢
- A、B
- A、E
- B、C
- C、D
- D、E
解答解説
正答は1番です。
Aの蛍石は天然に産出します。フッ素の原料として用いられます。
Bの蛍石(CaF2)の結晶構造では、面心立方ブラベ格子の各格子点に3個のイオン(1個のCa2+と2個のF-)が配置されています。単位格子当たりCa2+が8個、F-が4個で計12個のイオンがあります。
DやEについて、ジルコニウムの酸化物であるジルコニア(ZrO2)は代表的な耐火性セラミックス材料です。温度変化に伴い結晶型が変化し、純粋なジルコニア結晶では破壊が発生します。そのためCaOやY2O3のような金属酸化物を固溶させて相転移を抑制します。その際にZr4+側に酸化物イオン空孔が導入され、Zr4+の拡散係数は減少します。高温域ではこの空孔を介して酸化物イオンが容易に移動できるため酸素センサーに応用されます。
参考資料
-
フッ素の産出・フッ素樹脂の製造に欠かせない「蛍石」について
nihon-polymer.co.jp
-
配位数と結晶構造|セラミックス材料学2019
u.muroran-it.ac.jp
-
安定化 ジルコニアの低温熱容量 と格子欠陥
www.jstage.jst.go.jp
-
蛍石型構造:イオン伝導がよく見られる基本的な結晶構造
solid-mater.com