下記反応に対する反応機構で最も適切な組み合わせはどれか。
選択肢 | a | b | c | d | e |
---|---|---|---|---|---|
1 | SN1 | E1 | SN2 | E1cB | E2 |
2 | SN2 | E2 | SN1 | E1cB | E1 |
3 | SN1 | E2 | SN1 | E1 | E2 |
4 | SN2 | E1cB | SN2 | E2 | E1 |
5 | SN1 | E1 | SN2 | E2 | E1cB |
解答解説
正答は2番です。
求核置換反応及び脱離反応は大きく2種類ずつに分類できます。
- 求核置換反応
- SN1反応:まず基質からカルボカチオン中間体が生成し、次に求核剤が攻撃する2段階反応、3級炭素ほど反応しやすい
- SN2反応:求核剤の攻撃と脱離基の脱離が同時に起こり、1級炭素ほど反応しやすい
- 脱離反応
- E1脱離:まず脱離基が脱離してカルボカチオン中間体が生成し、次に弱塩基によってプロトンが引き抜かれてアルケンが生成
- E1cB反応:まず強塩基によってα水素が引き抜かれ、カルボアニオン中間体が生成し、次に脱離基が脱離してアルケンが生成
- E2脱離:プロトンの引き抜きと脱離基の脱離が同時に起こり、1級炭素ほど反応しやすい
脱離反応のうち、先にプロトンが引き抜かれ、その後脱離基が外れる場合をE1cB脱離と呼びます。”CB” は “conjugatebase”(共役塩基)を意味し、塩基がプロトンを引き抜くことで始まる脱離反応です。
- E1cB反応:カルボアニオン中間体を経由
- E1反応:カルボカチオン中間体を経由
(a)は1級炭素で立体障害が少ないためSN2反応で進行します。対して(c)はシクロヘキサン環による立体障害のためSN1反応で進行します。
(b)は1級炭素で立体障害が少なく強塩基で脱離しているためE2脱離で進行します。(e)はアルコールの脱水反応です。OHにプロトンが付加することで水として脱離することから始まるE1脱離です。majorとminorで2種類の生成物に偏りがあるのは、Saytzeff則により多置換アルケンの方が生成しやすいためです。
(d)は強塩基存在下でカルボニルのα, β炭素にて脱離していることからE1cB反応です。
参考資料
-
求核置換反応(SN2反応とSN1反応)
www.chem.s.u-tokyo.ac.jp
-
カルボニル化合物のα炭素の反応:E1cB
www1.meijo-u.ac.jp
-
脱離反応(E1反応とE2反応)
www.chem.s.u-tokyo.ac.jp