令和元年度 問1

Grignard試薬に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

  1. Grignard試薬はハロゲン化アルキルRXをエーテルやテトラヒドロフラン溶媒中、空気中の水分をできるだけ除いた雰囲気下で金属マグネシウムと反応させることにより調製される。炭素-マグネシウム結合は分極しており、試薬の炭素原子は求電子的で塩基性となっている。
  2. Grignard試薬のカルボニル化合物への付加の例として、ホルムアルデヒドH2C=Oと反応して第一級アルコールを、アセトアルデヒドCH3-CHOと反応して第二級アルコールを、ケトンと反応して第三級アルコールを与える。
  3. カルボン酸は、酸性のカルボキシ水素が塩基性Grignard試薬と反応して炭化水素とカルボン酸のマグネシウム塩を生じるため、Grignard試薬との付加生成物を与えない。
  4. エステルはGrignard試薬と反応して第三級アルコールを与えるが、生成したアルコールのヒドロキシ基を持つ炭素に結合している置換基のうち2つはGrignard試薬に由来する。
  5. CH3MgBr+H-C≡C-H → CH4+H-C≡C-MgBr
    の反応によりGrignard試薬を調製が可能である。ただし、H-C≡C-Hは、pKa=25、CH4はpKa=60である。

解答解説

正答は1番です。

ハロゲン化アルキルRXを金属マグネシウムと反応させてR-Mg-X結合をもつグリニャール試薬が調整できます。マグネシウム原子は炭素よりも電気陰性度が小さいためMgがδ+性、Rがδ-性を示します。つまり試薬の炭素原子は求核的で塩基性になっています。

強い塩基性を示すためプロトン、つまり水とも反応します。そのため空気中の水分をできるだけ除いた雰囲気下で調整しなければなりません。またエーテルやテトラヒドロフランを溶媒として用いるのは、エーテルやフランがもつ酸素原子の孤立電子対がマグネシウムに配位することによりグリニャール試薬を安定化するためです。

3番のカルボン酸は強塩基性であるグリニャール試薬と酸塩基反応してカルボン酸マグネシウム塩(共役塩基)を生成します。そのためグリニャール試薬は使えません。5番も同様の考え方で、酸性度の高いアルキンの末端水素とグリニャール試薬が反応します。

4番のエステルとグリニャール試薬の反応は、1モルのエステルに対し2モルのグリニャール試薬が反応します。1回目のグリニャール反応でカルボニル基は維持したまま脱離基であるアルコキシ基が脱離します。2回目のグリニャール反応でカルボニル部分がアルコールに変化します。そのためヒドロキシ基をもつ炭素に結合している置換基には2回分のグリニャール反応を経た置換基が結合しています。

参考資料

有機反応化学 第13回
有機反応化学 第13回

www.chem.s.u-tokyo.ac.jp

グリニャール反応 Grignard Reaction | Chem-Station (ケムステ)
グリニャール反応 Grignard Reaction

www.chem-station.com

https://www1.meijo-u.ac.jp/~tnagata/education/ochem1/2021/ochem1_02.pdf
有機化学Ⅰ講義資料 第2回「アルケン・アルキンのその他の反応・多段階合成」

www1.meijo-u.ac.jp

2024年3月10日 広告

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