令和3年度 問10

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製油所における精製装置に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

  1. 常圧蒸留装置は、原油を常圧にて蒸留し、LPG、ナフサ、灯油、軽油、常圧残油などの各留分に分けるものである。
  2. 減圧蒸留装置は、常圧残油を減圧下で蒸留し、潤滑油原料、間接脱硫原料、分解原料、アスファルト又は減圧残油に分けるものである。
  3. 接触改質装置は、軽質ナフサを原料とし、芳香族を高濃度に含む改質ガソリン(リフォーメート)を製造するものである。
  4. 流動接触分解装置は、触媒を用いて沸点の高い重質炭化水素を分解し、LPG留分、ガソリン留分及び中間留分を得るものである。
  5. アルキレーション装置は、プロピレンやブチレン等の不飽和炭化水素とイソブタンのような側鎖を持つ炭化水素を反応させてオクタン価の高い生成物(アルキレート)を得るものである。



解答解説

正答は3番です。

接触改質装置の原料は重質ナフサです。

まず原油は常圧蒸留装置でLPG、ナフサ、灯油、軽油、常圧残油などの各留分に分けられます。常圧残油、もしくは軽油と混ぜた石油製品は重油と呼ばれます(1番)。

常圧残油(留分にならなかったもの)は、減圧蒸留装置にて沸点を下げた状態で蒸留することで潤滑油原料、間接脱硫原料、分解原料、アスファルト又は減圧残油などに分けます(2番)。

重油留分は流動接触分解装置により固体触媒存在下で分解し、より低沸点であるLPG留分、ガソリン留分及び中間留分を得ます。クラッキングとも呼ばれます(4番)。

各種留分は水素化精製(水素化脱硫)装置にて、含有する不純物(特に硫黄分)を取り除きます。固体触媒中で高圧水素と反応させることで硫黄、窒素、酸素の不純物がそれぞれ硫化水素、アンモニア、水となって分離されます。この時、炭化水素も反応し、飽和や水素化分解などが起きます。またナフサは、石油化学用原料の「軽質ナフサ」とガソリン基材の「重質ナフサ」に分けられます。

常圧蒸留装置や接触分解装置から得られたLPGはアルキレーション装置でオクタン価が高められます。パラフィン系炭化水素(イソブタンなど)と、オレフィン系炭化水素(プロピレンやブチレンなど)との反応により、高オクタン価のイソパラフィンを得ます。高温高圧無触媒で製造するプロセスもありますが、商業的には硫酸やフッ化水素等の酸を触媒として用いる接触アルキル化プロセスが広く普及しています。

脱硫処理された”重質”ナフサは接触改質装置でオクタン価を高め芳香族主体のガソリン基材に改質(リフォーミング)します(5番)。そのため接触改質プロセスはベンゼン・トルエン・キシレン(BTX)製造プロセスにもなっています。シクロパラフィンの脱水素化や、パラフィンの環化脱水素化、異性化などにより、主に芳香族と水素が得られます。この時に得られる水素は他工程での水素供給源となります。

2024年3月11日