令和2年度 問1

下記反応に対する反応機構で最も適切な組み合わせはどれか。

選択肢abcde
1SN1E1SN2E1cBE2
2SN2E2SN1E1cBE1
3SN1E2SN1E1E2
4SN2E1cBSN2E2E1
5SN1E1SN2E2E1cB

解答解説

正答は2番です。

求核置換反応及び脱離反応は大きく2種類ずつに分類できます。

  • 求核置換反応
    • SN1反応:まず基質からカルボカチオン中間体が生成し、次に求核剤が攻撃する2段階反応、3級炭素ほど反応しやすい
    • SN2反応:求核剤の攻撃と脱離基の脱離が同時に起こり、1級炭素ほど反応しやすい
  • 脱離反応
    • E1脱離:まず脱離基が脱離してカルボカチオン中間体が生成し、次に弱塩基によってプロトンが引き抜かれてアルケンが生成
    • E1cB反応:まず強塩基によってα水素が引き抜かれ、カルボアニオン中間体が生成し、次に脱離基が脱離してアルケンが生成
    • E2脱離:プロトンの引き抜きと脱離基の脱離が同時に起こり、1級炭素ほど反応しやすい

脱離反応のうち、先にプロトンが引き抜かれ、その後脱離基が外れる場合をE1cB脱離と呼びます。”CB” は “conjugatebase”(共役塩基)を意味し、塩基がプロトンを引き抜くことで始まる脱離反応です。

  • E1cB反応:カルボアニオン中間体を経由
  • E1反応:カルボカチオン中間体を経由

(a)は1級炭素で立体障害が少ないためSN2反応で進行します。対して(c)はシクロヘキサン環による立体障害のためSN1反応で進行します。

(b)は1級炭素で立体障害が少なく強塩基で脱離しているためE2脱離で進行します。(e)はアルコールの脱水反応です。OHにプロトンが付加することで水として脱離することから始まるE1脱離です。majorとminorで2種類の生成物に偏りがあるのは、Saytzeff則により多置換アルケンの方が生成しやすいためです。

(d)は強塩基存在下でカルボニルのα, β炭素にて脱離していることからE1cB反応です。

参考資料

https://www.chem.s.u-tokyo.ac.jp/users/bioorg/member/Goto_class/ORC_05_handout_2018.pdf
求核置換反応(SN2反応とSN1反応)

www.chem.s.u-tokyo.ac.jp

https://www1.meijo-u.ac.jp/~tnagata/education/ochem2/2021/ochem2_06.pdf
カルボニル化合物のα炭素の反応:E1cB

www1.meijo-u.ac.jp

https://www.chem.s.u-tokyo.ac.jp/users/bioorg/member/Goto_class/ORC_06_handout_2019.pdf
脱離反応(E1反応とE2反応)

www.chem.s.u-tokyo.ac.jp

2024年3月11日 広告

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