無機イオン結晶に生成する欠陥の説明あるいは欠陥記号の組合せのうち、最も不適切なものはどれか。ここで、欠陥記号は、Kröger&Vinkによる表記法を用いるものとし、Mは金属を、Oは酸素を、Vは空孔を表し、有効電荷を表す記号として「*」か「'」を用いている。
- 有効電荷+1の酸素空礼は、VO*と表される。
- 有効電荷+2の格子間金属Mは、Mi**と表される。
- ホールは電子的な欠陥でありh'と表される。
- 結晶MO中に生成するショットキー欠陥は、VM''とVO**で表される。
- 結晶MO中に生成する陽イオンのフレンケル欠陥は、Mi**とVM''で表される。
解答解説
正答は3番です。
ホールの表記はh*です。電子はe'です。
原子や分子が並んだ結晶には、部分的に原子が不足したり余計な原子が侵入していたりする場合があります。これを格子欠陥と呼びます。欠陥の位置や範囲によって様々な分類がされています。
- 点欠陥
- 侵入型欠陥:格子点ではないところに原子が入り込む欠陥
- 置換型欠陥:原子が別の原子に置き換わっている欠陥
- 空孔による欠陥
- フレンケル欠陥:原子が抜けて格子点ではない隙間に入り込み空孔ができる欠陥
- ショットキー欠陥:原子が抜けて結晶表面に移動し空孔ができる欠陥
- 線欠陥
- 転位による欠陥:結晶格子の原子配列のずれが線状になった欠陥
- 面欠陥
- 積層欠陥:結晶面の重なり順序が乱れた欠陥
- 結晶粒界:結晶の規則的な配列が途切れている欠陥
欠陥の表記はクレーガー・ビンク(Kröger&Vink)の表記法が使われます。
空孔はVacancyの「V」、金属は「M」で表します。原子は元素記号で表し、例えば酸素は「O」です。右下には格子中のサイト(該当箇所)を示し、格子間サイトの場合はinterstitialの「i」が付けられます。右上には有効電荷を示し、欠陥が出る前の正規の電荷を基準に相対的な電荷数を示します。正電荷の場合は「*」(問題は*で通常はドット)、負電荷の場合は「'」です。電子は「e」、正孔は「h」で表現します。
(例)
O2-が存在していた位置に空孔(0価)が存在する酸素空孔の場合は有効電荷が+2となりVO**と表記します。
格子間酸素の場合は有効電荷が-2となりOi''と表記します。
4番のショットキー欠陥の場合は陽イオン空孔と陰イオン空孔が同時に生成します。元々+2価であったMのところが0価の空孔に変わっているため有効電荷が-2、VM''と表記します。反対に陰イオン空孔側はVO**です。
参考資料
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格子欠陥(lattice defect)
www.osakac.ac.jp
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格子欠陥の熱力学:点欠陥
www.mech.kagoshima-u.ac.jp
-
結晶中の欠陥
www.omu.ac.jp
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クレーガー・ビンクの表記法
www.jstage.jst.go.jp