核磁気共鳴(NMR)スペクトルに関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
- 一般的なNMRスペクトル測定の内部標準としてテトラメチルシランがよく用いられる。
- フッ素19(19F)やリン31(31P)の原子核は核スピンを持たないが、奇数個の陽子を持つ核なので、NMRスペクトル装置で検出できる。
- NMRスペクトルの化学シフト値は「観測されたシグナルと標準物質のシグナルとの振動数差(Hz)」を「分光器の振動数(MHz)」で割った値で、単位はppmである。
- トルエンの1H-NMRスペクトルでは、フェニル基プロトンのシグナルはメチル基プロトンのシグナルより低磁場側に出現する。
- 酢酸メチルの13C-NMRスペクトルでは、メチル基プロトンのシグナルが2重の一重線として観測される。
解答解説
正答は2番です。
3番のフッ素19(19F)やリン31(31P)の原子核は核スピンを持つためNMRで検出できます。核スピンの有無は、スピン量子数から判断できます。スピン量子数が0のものは(例:12C、16O、28Si、32S) 核スピンを持たないためNMRで検出できません。
1H-NMRスペクトルの化学シフト値は、NMRの外部磁場に応答してπ電子が環電流を生じます。更に、この環電流に対応する誘起磁場が発生します。アルケンやベンゼン環外側の水素は外部磁場と同じ向きの誘起磁場が発生するため反遮蔽効果により低磁場側へ出現します。対してアルキンやベンゼン環内側の水素は外部磁場と逆向きの誘起磁場が発生し、遮蔽効果により高磁場側へ出現します。
参考資料
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4. 核磁気共鳴スペクトル
www.maruzen-publishing.co.jp
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NMRの基礎知識【原理編】
www.kanto.co.jp
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立体化学についての復習
molecules.a.la9.jp