設備費の概算は、0.6乗則とモジュール係数法の2つで立てます。どちらも数字はすぐ出ますが、誤差は数十%あり高い側に外れやすい方法です。式と係数の目安を計算例と並べ、係数に入らない費用や予備費の取り方まで載せました。
設備費を概算する手順
- 機器の一覧を作り、機器ごとの購入価格を集める。過去の購入実績やメーカーの見積を使う。
- 容量の違う実績しかない機器は、0.6乗則で新しい容量の価格に直す(0.6乗則・0.7乗則による設備費の換算(別サイト))。
- 古い年の価格は、コスト指数の比を掛けて今の価格にそろえる。
- 機器費に設置係数を掛けて据付後の費用を出し、既設設備へのつなぎ込みなど係数に入らない費用を足す。
- 予備費と業者のフィーを足し、見積の段階に合った精度の幅を付けて示す(設備新設費の概算(別サイト))。
方法ごとの使いどころ
| 方法 | 手元にある情報 | 出てくる費用 | 精度の幅(見積に対する実際の費用) |
|---|---|---|---|
| 0.6乗則とコスト指数 | 同じ種類の設備の実績(容量と年が違う) | 実績と同じ範囲の費用(機器だけ、またはプラント全体) | −50〜+100%(設備全体を換算する構想の段階) |
| モジュール係数法 | 機器の一覧と購入価格 | 工事費と間接費を含む設備の総額 | −30〜+50%(概略の段階) |
| ラング係数法 | 主要機器の購入価格の合計 | プラント全体の建設費 | 約−17〜+43% |
| メーカー見積と工事費の積み上げ | 主要機器の見積と工事の数量の一部 | 予算を申請する総額 | −20〜+30%(予算の段階) |
構想・概略・予算の幅は、AACE 18R-97の各段階の広い側の値です。ラング係数法の幅は、化学工学協会 編(1975)の「見積が実際より−30〜+20%ずれる」を見積に対する実際の比に直した値です。
0.6乗則の式と指数nの目安
同じ種類の機器やプラントでは、容量と費用を両対数のグラフに取るとほぼ直線に並びます。この傾きが0.6前後になることから付いた名前が0.6乗則です。年の違う実績を使うときは、コスト指数の比も掛けます。
0.6乗則とコスト指数による換算[円]
式は横にスクロールできます
C1:分かっている費用[円]、C2:換算後の費用[円]、S1・S2:容量[任意の単位]、n:指数[-]、I1:費用の年のコスト指数[-]、I2:今のコスト指数[-]
容量を2倍にしたときの費用は、n=0.6なら1.52倍でn=0.7なら1.62倍です。大きな設備ほど容量あたりの費用は安くなります。容量には容積・伝熱面積・動力・生産能力などを使い、新旧で同じ量と単位にそろえます。
指数nの目安
| 対象 | 指数n | 出典 |
|---|---|---|
| 機器(一般) | 0.6〜0.7 | 化学工学協会 編(1975)p.76 |
| 多管式熱交換器(浮動頭・炭素鋼、伝熱面積約9〜930 m²) | 0.65 | 同 p.77(Guthrieのコストカーブ) |
| 単純なプラント(プラント全体) | 0.75〜0.95 | 同 p.76 |
| 化学品・石油精製の54プロセス(プロセスユニット。一部は貯槽を含む) | 0.38〜0.90(中央値0.65) | 同 図3·14のGuthrieの値から範囲と中央値を計算 |
| プラントの能力を3.75倍にしたときの機器の小分類ごとの指数(計算例) | 熱交換器0.21〜0.92、塔0.52〜1.03 | 同 pp.87〜88 |
0.6は代表値にすぎません。プラントの能力に対する指数で見ると、同じ熱交換器でも小分類によって0.2から0.9まで開く例があります。同じ種類の実績が2点あるなら、その2点から指数を出せます。
実績2点から求める指数[-]
式は横にスクロールできます
C1・C2:同じ年の価格にそろえた2点の費用[円]、S1・S2:2点の容量[任意の単位]
使えるのは、種類・方式・材質・圧力の条件が同じで容量だけが違う設備です。小型のプラントや圧力の非常に高いものには使えません。機器が作れる最大の大きさを超えて台数で増やす範囲では、指数は1に近づき1を超えることもあります。
コスト指数で年の違いをそろえる
コスト指数は、基準の年を100として費用の変わり方を表した数です。I1とI2には同じ系列で同じ基準年の値を使います。系列の違う値どうしの比には意味がありません。
主なコスト指数
| 指数 | 作成 | 基準と頻度 | 対象 | 資料 |
|---|---|---|---|---|
| 企業物価指数の品目「化学機械」 | 日本銀行 | 2020年=100、毎月 | 国内で生産し国内向けに出荷する化学機械の生産者価格 | 日本銀行 時系列統計データ検索サイト |
| プラントコストインデックス(PCI) | 日本機械輸出組合 | 2000年が基準、毎年の報告書 | 規模50〜250億円の化学プロセスプラントの建設費 | 関山(2026)p.14 |
| CEプラントコストインデックス(CEPCI) | 米国のChemical Engineering誌 | 1957〜1959年=100 | 米国の化学プラントの建設費 | 化学工学協会 編(1975)pp.48〜49 |
化学機械の指数(2020年=100)の暦年平均は、2016年が93.1で2025年が116.7でした。9年で1.25倍になっています。この系列は消費税を含む値で、消費税を除く系列なら比は1.231です。指数での補正の精度は、4〜5年でも10%程度が限度です(化学工学協会 編, 1975)。10年を超えると精度が急に落ちます。指数は品目の平均の動きしか表さず、その間の技術や生産性の変化も入らないためです。
海外の価格や係数を使うときは、年とは別に場所の違いも直します。同じ仕様でも建てる年と場所で費用が大きく変わるためです。場所の違いを表す数はロケーションファクター(LF)と呼びます。日本機械輸出組合が、日本を基準にした値を出しています。ドル建ての価格を為替で円にしただけでは、国ごとの工事費や調達の違いは入りません。
モジュール係数法の式と設置係数
モジュール係数法は機器の購入価格(機器費)に種類ごとの係数を掛けて、据付までの費用を見込む方法です。この係数を設置係数と呼び、元になったGuthrieのモジュール法のベアモジュール係数にあたります。設置係数には、配管・基礎・架構・計装・電気・保温・塗装の材料と工事の労務が入ります。輸送・現場経費・設計などの間接費も含む値です。予備費と業者のフィーは入りません。
機器ごとの据付後の費用[円]
式は横にスクロールできます
総額[円]
式は横にスクロールできます
Ei:機器費(価格×台数。据付工事を含まない購入価格)[円]、Mi:材質の倍率(炭素鋼=1)[-]、FBM,i:設置係数[-]、Cx:係数に入らない費用[円]、rc:予備費率[-]、rf:業者のフィー率[-]
設置係数は炭素鋼の機器での値です。材質の倍率を入れた機器では、工事費と間接費を炭素鋼で作った場合の価格(機器費÷倍率)に対して見込みます。これはGuthrie法の「基準価格×(材質などの補正係数+設置係数−1)」を、機器費で書き直した形です。
機器の種類ごとの設置係数(炭素鋼の機器)
| 機器の種類 | 設置係数 FBM |
|---|---|
| 塔・縦型容器 | 4.00 |
| 横型容器(受槽) | 2.97 |
| 熱交換器 | 3.14 |
| ポンプ(駆動機込み) | 3.25 |
| 圧縮機 | 2.90 |
| その他の機器(化学プロセスの平均) | 2.95 |
表の値は、化学工学協会 編(1975)の表3·14の係数から計算しました。白石(2011)の表7.1の係数で計算しても、塔・受槽・熱交換器・ポンプは同じ値になります。同じ表3·14でプロセス内のタンクを計算すると1.79で、横型容器の2.97とは別の値です。
係数は、機器費に3つの倍率を掛けて組み立てられています。塔・縦型容器なら、材料係数2.03と労務を足す1.47と間接コスト係数1.34の積が4.00です。材料係数は機器費と付帯材料の合計を機器費で割った値で、1.47は1+労務費÷直接材料費です。塔は配管や計装の材料が多く、材料係数が横型容器の1.63より大きくなります。
総額は機器費の何倍か
機器費の合計に1つの係数を掛けて、プラント全体の建設費を出すのがラング係数法です。同じ「総額÷機器費」でも、何を含むかで2.95から5.05まで違います。
総額÷機器費の目安
| 目安 | 倍率 | 入っている費用 |
|---|---|---|
| ラング係数(固体を扱うプラント) | 3.10 | プラント全体 |
| ラング係数(固体と流体を扱うプラント) | 3.63 | 同上 |
| ラング係数(流体を扱うプラント) | 4.74 | 同上。モンサント社の実績では3.58〜5.05 |
| Guthrieの設置係数(化学プロセスの平均) | 2.95 | 据付までの直接費と間接費 |
| 同上に予備費15%とフィー3%を足した係数 | 3.48 | 上の費用と予備費・フィー |
| 化学プラントの総建設費の経験則 | 約3 | 機器・装置費が全体の30%前後 |
| 主要機器コストに対するプラントコストの経験則 | 約3〜4 | 装置の構成を候補から絞るときの参考に限る |
出典:ラング係数と約3=関山(2026)p.13/モンサント社の幅・2.95・3.48=化学工学協会 編(1975)pp.54・71/約3〜4=白石(2011)p.134
ラング係数はLang(1948)が示した値で、建屋やユーティリティまで含めたプラント全体が対象です。既設の工場に機器を足す工事に使うと大きめに出ます。ラング係数を項目別に分けたチルトン法では、建屋の費用は既設の建屋に置くなら0です。屋内型のプラントで建屋を建てるなら、据付後の機器の費用の60〜100%を見込みます。
計算例
0.6乗則とコスト指数で換算する
例として、2016年に容積5 m³の反応槽を800万円で買った実績があるとします。2025年に10 m³の同じ形式の槽を買うときの費用を見積もります。指数nは機器の目安の0.6と0.7の2通りで計算し、コスト指数には日本銀行の化学機械の暦年平均を使いました。
| 項目 | n=0.6 | n=0.7 |
|---|---|---|
| 容量比のn乗(10÷5=2) | 1.516 | 1.625 |
| 指数の比(116.7÷93.1) | 1.253 | 1.253 |
| 換算後の費用 | 1,520万円 | 1,629万円 |
| 年の補正をしない場合 | 1,213万円 | 1,300万円 |
容量は2倍でも、費用は年の補正を含めて1.90〜2.04倍です。年の補正を忘れると、2割安く見積もることになります。指数による補正の誤差は4〜5年でも10%程度なので、9年前の実績ではそれより大きな誤差を見込みます。0.6と0.7の差の7%は、指数の不確かさから来る幅です。容量比が10倍なら、この差は26%に広がります。
モジュール係数法で総額を出す
例として、塔1基・熱交換器1基・ポンプ2台の設備を考えます。熱交換器は胴と管ともステンレス鋼です。材質の倍率は、Guthrieの値で伝熱面積100〜500 ft²(約9〜46 m²)のときの3.1とします。既設設備へのつなぎ込みに200万円を見込み、予備費は15%で業者のフィーは3%です。
| 項目 | 機器費 | 設置係数 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 塔(炭素鋼) | 1,800万円 | 4.00 | 7,200万円 |
| 熱交換器(材質の倍率3.1) | 900万円 | 3.14(実効1.69) | 1,521万円 |
| ポンプ(120万円×2台) | 240万円 | 3.25 | 780万円 |
| 係数に入らない費用(つなぎ込み) | − | − | 200万円 |
| 小計 | 2,940万円 | − | 9,701万円 |
| 予備費15%と業者のフィー3% | − | − | 1,746万円 |
| 総額 | − | − | 1億1,448万円 |
総額は機器費の3.89倍です。機器費の6割を占める塔の設置係数4.00が効いています。熱交換器の据付後の費用が機器費の1.69倍と小さいのは、工事費を炭素鋼相当の290万円に対して見込んだためです。概略の段階の幅を付けると、8,013万〜1億7,171万円になります。同じ機器費にラング係数(流体を扱うプラント4.74)を掛けると1億3,936万円で、モジュール係数法の1.22倍です。
見積の段階と精度の幅
国際コストエンジニアリング推進協会(AACE)の推奨プラクティス18R-97は、設計の進み具合で見積を5つの段階に分けています。
| 見積の段階 | 主な方法 | 精度の幅(AACE 18R-97 Table 1) | 国内の見積の区分と幅(関山 2026 p.17) |
|---|---|---|---|
| 構想(Class 5) | 容量の換算・類推 | −20〜−50%/+30〜+100% | − |
| 概略(Class 4) | 機器の一覧と係数 | −15〜−30%/+20〜+50% | F/S用(超概算)−30〜+50% |
| 予算(Class 3) | 見積と一部の積み上げ | −10〜−20%/+10〜+30% | 予算用(概算)−15〜+30% |
| 詳細(Class 2・1) | 図面からの数量の拾い出しと単価 | −3〜−15%/+3〜+20% | 入札用(詳細)−5〜+15%、実行予算用±5% |
AACEの幅は、適切な予備費を入れた見積に対して8割の案件が収まる範囲です。予備費を除いた見積には、この幅は当てはまりません。どの段階でも幅は下側より上側が広くなっています。発注する側が自分で概算しておけば、受け取った見積が妥当かを見る目安にもなります。研究開発やスケールアップの途中で事業化を決めるまでの見積は、構想か概略の段階です。
外れやすい条件と確かめ方
- 係数は米国の1960年代の化学プラントの平均です。 労務と材料の比は米国の建設で0.32〜0.40とされ、賃金や労働効率で大きく変わります(化学工学協会 編, 1975)。自社の実績があれば、総額÷機器費を実績と比べて確かめます。
- 既設設備とのつなぎ込み・撤去・建屋・運転中の工事による割増しは、設置係数に入っていません。分かっている分は「係数に入らない費用」に足します。
- 材質の倍率は機器費だけに効かせる扱いです。Guthrieの値では、胴・管ともチタンの熱交換器の材質の倍率は10〜17になります。特殊な材質の機器や、機器費の大半が材質以外で決まる機器にはこの扱いが合いません。
- 実績の価格が据付や輸送を含むかどうかで、0.6乗則の結果の範囲も変わります。設置係数を掛ける機器費は、据付工事を含まない購入価格にそろえます。
- 予備費の率はプロセスの確かさで変えます。チルトン法の目安は、確定したプロセスで10〜20%です。変更のあるプロセスは20〜30%、不確定なプロセスは30〜50%を見込みます。
- 業者のフィーは通常3〜5%です。自社で施工する場合や、見積の価格にすでに含まれている場合は0にします。
- 設備費だけで案を比べない。 安い設備でも、エネルギーや修理の費用がかさむと運転を含めた総額では高くつきます。自動化した設備は高い一方、手作業の多い設備には人件費が毎年かかります。
参考資料
- 化学工学協会関東支部 編『プロセス設計シリーズ6 経済評価とプラントコスト』丸善(1975)3章(3·1 コストインデックス、3·2 ラング-チルトン法、3·3 モジュール法、3·4 0.6乗則法)
- 関山隆彦「化学プラント建設費について」化学工学 第90巻 第1号 pp.13〜17(2026) https://www.scej.org/docs/publication/journal/backnumber/Bulletin090010013.pdf
- AACE International Recommended Practice No. 18R-97 "Cost Estimate Classification System – As Applied in Engineering, Procurement, and Construction for the Process Industries"(Rev. 2020)Table 1
- 白石浩『化学プラントのプロセス設計―化学プラント工学入門―』(分離技術シリーズ22)分離技術会(2011)7章(表7.1)
- 日本銀行「企業物価指数(2020年基準)」国内企業物価指数 品目「化学機械」(時系列統計データ検索サイト) https://www.stat-search.boj.or.jp/
- J. R. Viguri Fuente, E. Cifrian Bemposta "Chemical Process Design / Diseño de Procesos Químicos. Topic 5.1 Equipment sizing and costing. Introduction" カンタブリア大学 OpenCourseWare(2017)pp.5・7 https://ocw.unican.es/pluginfile.php/2992/course/section/2870/topic_5.1.pdf
