設備費の概算方法

プラント設計・運転/プロセス設計・評価プロセス設計・評価の2本目(全2本)公開

設備費の概算は、0.6乗則とモジュール係数法の2つで立てます。どちらも数字はすぐ出ますが、誤差は数十%あり高い側に外れやすい方法です。式と係数の目安を計算例と並べ、係数に入らない費用や予備費の取り方まで載せました。

設備費を概算する手順

  1. 機器の一覧を作り、機器ごとの購入価格を集める。過去の購入実績やメーカーの見積を使う。
  2. 容量の違う実績しかない機器は、0.6乗則で新しい容量の価格に直す(0.6乗則・0.7乗則による設備費の換算(別サイト))。
  3. 古い年の価格は、コスト指数の比を掛けて今の価格にそろえる。
  4. 機器費に設置係数を掛けて据付後の費用を出し、既設設備へのつなぎ込みなど係数に入らない費用を足す。
  5. 予備費と業者のフィーを足し、見積の段階に合った精度の幅を付けて示す(設備新設費の概算(別サイト))。

方法ごとの使いどころ

方法 手元にある情報 出てくる費用 精度の幅(見積に対する実際の費用)
0.6乗則とコスト指数 同じ種類の設備の実績(容量と年が違う) 実績と同じ範囲の費用(機器だけ、またはプラント全体) −50〜+100%(設備全体を換算する構想の段階)
モジュール係数法 機器の一覧と購入価格 工事費と間接費を含む設備の総額 −30〜+50%(概略の段階)
ラング係数法 主要機器の購入価格の合計 プラント全体の建設費 約−17〜+43%
メーカー見積と工事費の積み上げ 主要機器の見積と工事の数量の一部 予算を申請する総額 −20〜+30%(予算の段階)

構想・概略・予算の幅は、AACE 18R-97の各段階の広い側の値です。ラング係数法の幅は、化学工学協会 編(1975)の「見積が実際より−30〜+20%ずれる」を見積に対する実際の比に直した値です。

この記事の内容
  1. 0.6乗則の式と指数nの目安
  2. モジュール係数法の式と設置係数
  3. 計算例
  4. 見積の段階と精度の幅
  5. 外れやすい条件と確かめ方
  6. 参考資料

0.6乗則の式と指数nの目安

同じ種類の機器やプラントでは、容量と費用を両対数のグラフに取るとほぼ直線に並びます。この傾きが0.6前後になることから付いた名前が0.6乗則です。年の違う実績を使うときは、コスト指数の比も掛けます。

0.6乗則とコスト指数による換算[円]

$$C_2 = C_1 \left( \dfrac{S_2}{S_1} \right)^{n} \dfrac{I_2}{I_1}$$

式は横にスクロールできます

C1:分かっている費用[円]、C2:換算後の費用[円]、S1・S2:容量[任意の単位]、n:指数[-]、I1:費用の年のコスト指数[-]、I2:今のコスト指数[-]

容量を2倍にしたときの費用は、n=0.6なら1.52倍でn=0.7なら1.62倍です。大きな設備ほど容量あたりの費用は安くなります。容量には容積・伝熱面積・動力・生産能力などを使い、新旧で同じ量と単位にそろえます。

指数nの目安

対象 指数n 出典
機器(一般) 0.6〜0.7 化学工学協会 編(1975)p.76
多管式熱交換器(浮動頭・炭素鋼、伝熱面積約9〜930 m²) 0.65 同 p.77(Guthrieのコストカーブ)
単純なプラント(プラント全体) 0.75〜0.95 同 p.76
化学品・石油精製の54プロセス(プロセスユニット。一部は貯槽を含む) 0.38〜0.90(中央値0.65) 同 図3·14のGuthrieの値から範囲と中央値を計算
プラントの能力を3.75倍にしたときの機器の小分類ごとの指数(計算例) 熱交換器0.21〜0.92、塔0.52〜1.03 同 pp.87〜88

0.6は代表値にすぎません。プラントの能力に対する指数で見ると、同じ熱交換器でも小分類によって0.2から0.9まで開く例があります。同じ種類の実績が2点あるなら、その2点から指数を出せます。

実績2点から求める指数[-]

$$n = \dfrac{\ln \left( C_2 / C_1 \right)}{\ln \left( S_2 / S_1 \right)}$$

式は横にスクロールできます

C1・C2:同じ年の価格にそろえた2点の費用[円]、S1・S2:2点の容量[任意の単位]

使えるのは、種類・方式・材質・圧力の条件が同じで容量だけが違う設備です。小型のプラントや圧力の非常に高いものには使えません。機器が作れる最大の大きさを超えて台数で増やす範囲では、指数は1に近づき1を超えることもあります。

コスト指数で年の違いをそろえる

コスト指数は、基準の年を100として費用の変わり方を表した数です。I1とI2には同じ系列で同じ基準年の値を使います。系列の違う値どうしの比には意味がありません。

主なコスト指数

指数 作成 基準と頻度 対象 資料
企業物価指数の品目「化学機械」 日本銀行 2020年=100、毎月 国内で生産し国内向けに出荷する化学機械の生産者価格 日本銀行 時系列統計データ検索サイト
プラントコストインデックス(PCI) 日本機械輸出組合 2000年が基準、毎年の報告書 規模50〜250億円の化学プロセスプラントの建設費 関山(2026)p.14
CEプラントコストインデックス(CEPCI) 米国のChemical Engineering誌 1957〜1959年=100 米国の化学プラントの建設費 化学工学協会 編(1975)pp.48〜49

化学機械の指数(2020年=100)の暦年平均は、2016年が93.1で2025年が116.7でした。9年で1.25倍になっています。この系列は消費税を含む値で、消費税を除く系列なら比は1.231です。指数での補正の精度は、4〜5年でも10%程度が限度です(化学工学協会 編, 1975)。10年を超えると精度が急に落ちます。指数は品目の平均の動きしか表さず、その間の技術や生産性の変化も入らないためです。

海外の価格や係数を使うときは、年とは別に場所の違いも直します。同じ仕様でも建てる年と場所で費用が大きく変わるためです。場所の違いを表す数はロケーションファクター(LF)と呼びます。日本機械輸出組合が、日本を基準にした値を出しています。ドル建ての価格を為替で円にしただけでは、国ごとの工事費や調達の違いは入りません。

モジュール係数法の式と設置係数

モジュール係数法は機器の購入価格(機器費)に種類ごとの係数を掛けて、据付までの費用を見込む方法です。この係数を設置係数と呼び、元になったGuthrieのモジュール法のベアモジュール係数にあたります。設置係数には、配管・基礎・架構・計装・電気・保温・塗装の材料と工事の労務が入ります。輸送・現場経費・設計などの間接費も含む値です。予備費と業者のフィーは入りません。

機器ごとの据付後の費用[円]

$$C_{\mathrm{inst},i} = E_i + \dfrac{E_i}{M_i}\left(F_{\mathrm{BM},i} - 1\right)$$

式は横にスクロールできます

総額[円]

$$C_{\mathrm{total}} = \left(\sum_i C_{\mathrm{inst},i} + C_{\mathrm{x}}\right)\left(1 + r_{\mathrm{c}} + r_{\mathrm{f}}\right)$$

式は横にスクロールできます

Ei:機器費(価格×台数。据付工事を含まない購入価格)[円]、Mi:材質の倍率(炭素鋼=1)[-]、FBM,i:設置係数[-]、Cx:係数に入らない費用[円]、rc:予備費率[-]、rf:業者のフィー率[-]

設置係数は炭素鋼の機器での値です。材質の倍率を入れた機器では、工事費と間接費を炭素鋼で作った場合の価格(機器費÷倍率)に対して見込みます。これはGuthrie法の「基準価格×(材質などの補正係数+設置係数−1)」を、機器費で書き直した形です。

機器の種類ごとの設置係数(炭素鋼の機器)

機器の種類 設置係数 FBM
塔・縦型容器 4.00
横型容器(受槽) 2.97
熱交換器 3.14
ポンプ(駆動機込み) 3.25
圧縮機 2.90
その他の機器(化学プロセスの平均) 2.95

表の値は、化学工学協会 編(1975)の表3·14の係数から計算しました。白石(2011)の表7.1の係数で計算しても、塔・受槽・熱交換器・ポンプは同じ値になります。同じ表3·14でプロセス内のタンクを計算すると1.79で、横型容器の2.97とは別の値です。

係数は、機器費に3つの倍率を掛けて組み立てられています。塔・縦型容器なら、材料係数2.03と労務を足す1.47と間接コスト係数1.34の積が4.00です。材料係数は機器費と付帯材料の合計を機器費で割った値で、1.47は1+労務費÷直接材料費です。塔は配管や計装の材料が多く、材料係数が横型容器の1.63より大きくなります。

総額は機器費の何倍か

機器費の合計に1つの係数を掛けて、プラント全体の建設費を出すのがラング係数法です。同じ「総額÷機器費」でも、何を含むかで2.95から5.05まで違います。

総額÷機器費の目安

目安 倍率 入っている費用
ラング係数(固体を扱うプラント) 3.10 プラント全体
ラング係数(固体と流体を扱うプラント) 3.63 同上
ラング係数(流体を扱うプラント) 4.74 同上。モンサント社の実績では3.58〜5.05
Guthrieの設置係数(化学プロセスの平均) 2.95 据付までの直接費と間接費
同上に予備費15%とフィー3%を足した係数 3.48 上の費用と予備費・フィー
化学プラントの総建設費の経験則 約3 機器・装置費が全体の30%前後
主要機器コストに対するプラントコストの経験則 約3〜4 装置の構成を候補から絞るときの参考に限る

出典:ラング係数と約3=関山(2026)p.13/モンサント社の幅・2.95・3.48=化学工学協会 編(1975)pp.54・71/約3〜4=白石(2011)p.134

ラング係数はLang(1948)が示した値で、建屋やユーティリティまで含めたプラント全体が対象です。既設の工場に機器を足す工事に使うと大きめに出ます。ラング係数を項目別に分けたチルトン法では、建屋の費用は既設の建屋に置くなら0です。屋内型のプラントで建屋を建てるなら、据付後の機器の費用の60〜100%を見込みます。

計算例

0.6乗則とコスト指数で換算する

例として、2016年に容積5 m³の反応槽を800万円で買った実績があるとします。2025年に10 m³の同じ形式の槽を買うときの費用を見積もります。指数nは機器の目安の0.6と0.7の2通りで計算し、コスト指数には日本銀行の化学機械の暦年平均を使いました。

項目 n=0.6 n=0.7
容量比のn乗(10÷5=2) 1.516 1.625
指数の比(116.7÷93.1) 1.253 1.253
換算後の費用 1,520万円 1,629万円
年の補正をしない場合 1,213万円 1,300万円

容量は2倍でも、費用は年の補正を含めて1.90〜2.04倍です。年の補正を忘れると、2割安く見積もることになります。指数による補正の誤差は4〜5年でも10%程度なので、9年前の実績ではそれより大きな誤差を見込みます。0.6と0.7の差の7%は、指数の不確かさから来る幅です。容量比が10倍なら、この差は26%に広がります。

モジュール係数法で総額を出す

例として、塔1基・熱交換器1基・ポンプ2台の設備を考えます。熱交換器は胴と管ともステンレス鋼です。材質の倍率は、Guthrieの値で伝熱面積100〜500 ft²(約9〜46 m²)のときの3.1とします。既設設備へのつなぎ込みに200万円を見込み、予備費は15%で業者のフィーは3%です。

項目 機器費 設置係数 金額
塔(炭素鋼) 1,800万円 4.00 7,200万円
熱交換器(材質の倍率3.1) 900万円 3.14(実効1.69) 1,521万円
ポンプ(120万円×2台) 240万円 3.25 780万円
係数に入らない費用(つなぎ込み) − − 200万円
小計 2,940万円 − 9,701万円
予備費15%と業者のフィー3% − − 1,746万円
総額 − − 1億1,448万円

総額は機器費の3.89倍です。機器費の6割を占める塔の設置係数4.00が効いています。熱交換器の据付後の費用が機器費の1.69倍と小さいのは、工事費を炭素鋼相当の290万円に対して見込んだためです。概略の段階の幅を付けると、8,013万〜1億7,171万円になります。同じ機器費にラング係数(流体を扱うプラント4.74)を掛けると1億3,936万円で、モジュール係数法の1.22倍です。

見積の段階と精度の幅

国際コストエンジニアリング推進協会(AACE)の推奨プラクティス18R-97は、設計の進み具合で見積を5つの段階に分けています。

見積の段階 主な方法 精度の幅(AACE 18R-97 Table 1) 国内の見積の区分と幅(関山 2026 p.17)
構想(Class 5) 容量の換算・類推 −20〜−50%/+30〜+100% −
概略(Class 4) 機器の一覧と係数 −15〜−30%/+20〜+50% F/S用(超概算)−30〜+50%
予算(Class 3) 見積と一部の積み上げ −10〜−20%/+10〜+30% 予算用(概算)−15〜+30%
詳細(Class 2・1) 図面からの数量の拾い出しと単価 −3〜−15%/+3〜+20% 入札用(詳細)−5〜+15%、実行予算用±5%

AACEの幅は、適切な予備費を入れた見積に対して8割の案件が収まる範囲です。予備費を除いた見積には、この幅は当てはまりません。どの段階でも幅は下側より上側が広くなっています。発注する側が自分で概算しておけば、受け取った見積が妥当かを見る目安にもなります。研究開発やスケールアップの途中で事業化を決めるまでの見積は、構想か概略の段階です。

外れやすい条件と確かめ方

  • 係数は米国の1960年代の化学プラントの平均です。 労務と材料の比は米国の建設で0.32〜0.40とされ、賃金や労働効率で大きく変わります(化学工学協会 編, 1975)。自社の実績があれば、総額÷機器費を実績と比べて確かめます。
  • 既設設備とのつなぎ込み・撤去・建屋・運転中の工事による割増しは、設置係数に入っていません。分かっている分は「係数に入らない費用」に足します。
  • 材質の倍率は機器費だけに効かせる扱いです。Guthrieの値では、胴・管ともチタンの熱交換器の材質の倍率は10〜17になります。特殊な材質の機器や、機器費の大半が材質以外で決まる機器にはこの扱いが合いません。
  • 実績の価格が据付や輸送を含むかどうかで、0.6乗則の結果の範囲も変わります。設置係数を掛ける機器費は、据付工事を含まない購入価格にそろえます。
  • 予備費の率はプロセスの確かさで変えます。チルトン法の目安は、確定したプロセスで10〜20%です。変更のあるプロセスは20〜30%、不確定なプロセスは30〜50%を見込みます。
  • 業者のフィーは通常3〜5%です。自社で施工する場合や、見積の価格にすでに含まれている場合は0にします。
  • 設備費だけで案を比べない。 安い設備でも、エネルギーや修理の費用がかさむと運転を含めた総額では高くつきます。自動化した設備は高い一方、手作業の多い設備には人件費が毎年かかります。

参考資料

  1. 化学工学協会関東支部 編『プロセス設計シリーズ6 経済評価とプラントコスト』丸善(1975)3章(3·1 コストインデックス、3·2 ラング-チルトン法、3·3 モジュール法、3·4 0.6乗則法)
  2. 関山隆彦「化学プラント建設費について」化学工学 第90巻 第1号 pp.13〜17(2026) https://www.scej.org/docs/publication/journal/backnumber/Bulletin090010013.pdf
  3. AACE International Recommended Practice No. 18R-97 "Cost Estimate Classification System – As Applied in Engineering, Procurement, and Construction for the Process Industries"(Rev. 2020)Table 1
  4. 白石浩『化学プラントのプロセス設計―化学プラント工学入門―』(分離技術シリーズ22)分離技術会(2011)7章(表7.1)
  5. 日本銀行「企業物価指数(2020年基準)」国内企業物価指数 品目「化学機械」(時系列統計データ検索サイト) https://www.stat-search.boj.or.jp/
  6. J. R. Viguri Fuente, E. Cifrian Bemposta "Chemical Process Design / Diseño de Procesos Químicos. Topic 5.1 Equipment sizing and costing. Introduction" カンタブリア大学 OpenCourseWare(2017)pp.5・7 https://ocw.unican.es/pluginfile.php/2992/course/section/2870/topic_5.1.pdf

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